vol.82 エマがリシケシを発つ
犬連れインドヨガ滞在記
リシケシの町を恐怖におとしいれた暴走族二人組。
エマ「どけどけーい♪」
私 「ぱらりら ぱらりらー♪」
エマ「あたし、もうリシケシ最後の日だからさ。
色んな人にお礼を言って回ろうと思って
昨日からバイクレンタルし てるのよ。
もう挨拶まわりは済んだから、今日圭子どこか行きたい所ある?」
私「ある!」
私は後部座席に飛び乗った。
私「エマ知ってる?大通りに居る、
真っ黒い浮浪者、ていうか、 お乞食さん、ていうか。。。
黒人みたいに体中真っ黒で、 真っ黒な毛布かぶっていて、
でも唇が、なんか溶けているようで、
ピンク色の歯茎がむき出している人。。。」
エマ「ああ、メルティーさんでしょ。」
私「メルティーさん?ていう名前なの?」
エマ「ううん、アタシがそう呼んでるだけ。 くちびる溶けてるから。」
私「ブハッハハハ。。。!わ、笑っちゃいかん。
き、 きみ何という失礼な事を!
ブ、ブハッ、ハハハ。。。!!」
エマ「笑ってるじゃん。」
私「あの人の居場所を知りたいの。
いつもリキシャで大通りを走っている時見かけるんだけど、
毎日、 微妙に場所が違っていて。。。」
エマ「ああ、メルティーさん、北上してる、って噂知ってる?」
私「え?!」
エマ「都市伝説では、
メルティーさんは本当は南インドの生まれで、
這いずりながらだんだん北上してとうとう北インドまで来て、
今は更にヒマラヤを目指している、っていう。。。」
私「本当っぽくて怖いよー(^^;)!!!」
馬鹿な話をしている内に、
二人「いた!!!」
メルティーさんを見つけた。
バイクを降りて、私はかけよる。
ハロー、ナマステジ。。。
ウッホ、ウッホ、とメルティーさんは応える。
私が初めてリシケシに来た早朝、
長距離バスの中からメルティーさんを見た。
それ以来、リキシャで通りすがるたびに見かけて、
ずっと気になっていたのだ。
初めて間近で見たメルティーさんは、
もちろんサドゥーとも違う、
知的障害者とも違う、
もっと牧歌的な、無垢な動物そのもののような存在だった。
外国人の女がメルティーさんに話しかけようとしているので、
まわりのインド人がなんだなんだと寄って来た。
インド人「話そうとしても無駄だよ。彼は頭がおかしいから、 喋れないんだ。」
私「彼には、おうちが、あるのですか。。。?」
インド人「あるわけないじゃないか。オレとか、 あの店の主人とか、
通りすがりの人が、
彼にミルクをやったり、ご飯をあげたりしているんだよ。」
私「私、もうすぐ日本に帰るので、彼に毛布をもらって欲しくて、
場所を確認しに来たんです。。。」
インド人「ちょこちょこ移動しているけどね。」
メルティーさんはもともと歩けないようだった。
手で体をひきづって楽しそうに這っている。
足はつぶれている。手も片方はつぶれていた。
歯茎がむきだしているのは
ケガをしたのか、させられたのか、と思っていたが、
初めて間近で御会いして、生まれつきなのかも知れない、と感じた。
日本やアメリカ、先進国だったら、
お医者さんや両親の意向で、
生まれた日に殺されてしまう事も多い、障害を持った沢山の人々。
でもインドでは生まれても殺されず、その知能のまま、 その肉体のまま、
みんなにごはんをもらって、毎日楽しそうに生きているね。
よかった。。。
この写真を取る時、
私は戦場カメラマンの気持ちが少しわかってしまった。
一見ショッキングに見える対象に、レンズを向ける時、
私は一体、何様なのだ?
この人たちにレンズを向ける資格なんてものが、 はたして自分にはあるのか?
でも撮っちゃったけど。どないやねん。
メルティーさんの場所は確認した。
エマと私はバイクにのり、宿のほうへと戻った。
たくさんのバックパッカー達とすれ違う。
私「見事にインドって、ヒッピー外国人ばかりだねー」
エマ「あたしの友達も言ってたよ。
リシケシって、 ただの貧乏人の集まりじゃんて。」
私「若い人にはさ、
少ないお小遣いで世界を体験出来る、 いい機会なのだと思うよ。
でもエマは、自分でスタジオ経営していてる、大人じゃん?
ちゃんと自立してる社会人じゃん?」
エマ「別にそんなことないわよ。」
私「でももっと大金持ちだったとしたらさ、
バカンスだとしたら、 違う所に来た?」
エマ「うーん。ドバイとか?」
夕日が沈みきって、リシケシの山々に、川沿いに、灯りが灯る。
なんてきれいなんだ。
大好きな友達と、 バイクに乗って見るネオン。
私「あーエマー!」
エマ「んー!」
私「ほんとキレイだねー!」
エマ「んー!」
私「熱海の夜景って。」
エマ「ホント。」
マジで、リシケシの夜景は熱海にそっくりなのです。
最後の夜、またサンジープジの家で御馳走に呼ばれた。
重ねて言うけれど、この時もサンジープジの家は断水で、
私たちをもてなすためにどれだけのミネラルウォーターを、
密かに用意し御馳走を作ってくれていたのか分からない。
そんな事も知らずに私とエマは食って飲んで、
パルツ兄ちゃんとサルタックと遊び、
ウーシャ奥さんの手料理をたいらげサンジープジと笑った。
エマは「また半年後にバカンスで来るよ」、
とウーシャ奥さんとハグして、家を出た。
家族みんなが玄関で見送ってくれる。
エマ&私「ごちそーさまー!さよーならー!ありがとうねー!」
ウーシャだけが、私たちが家の角を曲がっても、その角まで来て
私たちを見送っていた。
リシケシの町を恐怖におとしいれた暴走族二人組。
エマ「どけどけーい♪」
私 「ぱらりら ぱらりらー♪」
エマ「あたし、もうリシケシ最後の日だからさ。
色んな人にお礼を言って回ろうと思って
昨日からバイクレンタルし
もう挨拶まわりは済んだから、今日圭子どこか行きたい所ある?」
私「ある!」
私は後部座席に飛び乗った。
私「エマ知ってる?大通りに居る、
真っ黒い浮浪者、ていうか、
黒人みたいに体中真っ黒で、
でも唇が、なんか溶けているようで、
エマ「ああ、メルティーさんでしょ。」
私「メルティーさん?ていう名前なの?」
エマ「ううん、アタシがそう呼んでるだけ。
私「ブハッハハハ。。。!わ、笑っちゃいかん。
き、
ブ、ブハッ、ハハハ。。。!!」
エマ「笑ってるじゃん。」
私「あの人の居場所を知りたいの。
毎日、
エマ「ああ、メルティーさん、北上してる、って噂知ってる?」
私「え?!」
エマ「都市伝説では、
今は更にヒマラヤを目指している、っていう。。。」
私「本当っぽくて怖いよー(^^;)!!!」
馬鹿な話をしている内に、
二人「いた!!!」
メルティーさんを見つけた。
バイクを降りて、私はかけよる。
ハロー、ナマステジ。。。
ウッホ、ウッホ、とメルティーさんは応える。
私が初めてリシケシに来た早朝、
長距離バスの中からメルティーさんを見た。
それ以来、リキシャで通りすがるたびに見かけて、
ずっと気になっていたのだ。
初めて間近で見たメルティーさんは、
もちろんサドゥーとも違う、
知的障害者とも違う、
もっと牧歌的な、無垢な動物そのもののような存在だった。
外国人の女がメルティーさんに話しかけようとしているので、
まわりのインド人がなんだなんだと寄って来た。
インド人「話そうとしても無駄だよ。彼は頭がおかしいから、
私「彼には、おうちが、あるのですか。。。?」
インド人「あるわけないじゃないか。オレとか、
通りすがりの人が、
彼にミルクをやったり、ご飯をあげたりしているんだよ。」
私「私、もうすぐ日本に帰るので、彼に毛布をもらって欲しくて、
場所を確認しに来たんです。。。」
インド人「ちょこちょこ移動しているけどね。」
メルティーさんはもともと歩けないようだった。
手で体をひきづって楽しそうに這っている。
足はつぶれている。手も片方はつぶれていた。
歯茎がむきだしているのは
ケガをしたのか、させられたのか、と思っていたが、
初めて間近で御会いして、生まれつきなのかも知れない、と感じた。
日本やアメリカ、先進国だったら、
お医者さんや両親の意向で、
生まれた日に殺されてしまう事も多い、障害を持った沢山の人々。
でもインドでは生まれても殺されず、その知能のまま、
みんなにごはんをもらって、毎日楽しそうに生きているね。
よかった。。。
この写真を取る時、
私は戦場カメラマンの気持ちが少しわかってしまった。
一見ショッキングに見える対象に、レンズを向ける時、
私は一体、何様なのだ?
この人たちにレンズを向ける資格なんてものが、
でも撮っちゃったけど。どないやねん。
メルティーさんの場所は確認した。
エマと私はバイクにのり、宿のほうへと戻った。
たくさんのバックパッカー達とすれ違う。
私「見事にインドって、ヒッピー外国人ばかりだねー」
エマ「あたしの友達も言ってたよ。
リシケシって、
私「若い人にはさ、
少ないお小遣いで世界を体験出来る、
でもエマは、自分でスタジオ経営していてる、大人じゃん?
ちゃんと自立してる社会人じゃん?」
エマ「別にそんなことないわよ。」
私「でももっと大金持ちだったとしたらさ、
バカンスだとしたら、
エマ「うーん。ドバイとか?」
夕日が沈みきって、リシケシの山々に、川沿いに、灯りが灯る。
なんてきれいなんだ。
大好きな友達と、
私「あーエマー!」
エマ「んー!」
私「ほんとキレイだねー!」
エマ「んー!」
私「熱海の夜景って。」
エマ「ホント。」
マジで、リシケシの夜景は熱海にそっくりなのです。
最後の夜、またサンジープジの家で御馳走に呼ばれた。
重ねて言うけれど、この時もサンジープジの家は断水で、
私たちをもてなすためにどれだけのミネラルウォーターを、
密かに用意し御馳走を作ってくれていたのか分からない。
そんな事も知らずに私とエマは食って飲んで、
パルツ兄ちゃんとサルタックと遊び、
ウーシャ奥さんの手料理をたいらげサンジープジと笑った。
エマは「また半年後にバカンスで来るよ」、
家族みんなが玄関で見送ってくれる。
エマ&私「ごちそーさまー!さよーならー!ありがとうねー!」
ウーシャだけが、私たちが家の角を曲がっても、その角まで来て
私たちを見送っていた。
私「あー美味しかったねー♪
スイスコテージで缶ビール飲んだ時は、
すぐ気持ち悪くなっちゃったのに、
サンジープジんちで飲むお酒は、
エマ「。。。。。」
私「あれ?ウーシャ、まだあそこの角に立ってる。
おーい、ウーシャー!ありがとねー!
早く家はいってー!風邪引くよー!」
エマ「。。。。。」
私「あー楽しかったねー♪」
エマ「。。。。。」
私「。。。エマ?」
エマ「。。。あたしゼッタイ人前で。。。
私「。。。。。」
エマ「いっつも。。。ああなんだよ、ウーシャ。。。
アタシが日本に帰るたびに。。。
ああやって、いつまでも、見送って。。。」
私「。。。。。」
振り返ると、もう遠くて小さくなったウーシャはまだ、
家の角のところで1人で寂しそうにたたずんでいた。
ウーシャ。。。。
エマ「。。。。っ」
エマは泣くのを見られまい、見られまい、としているのだけど、
こらえきれなかった様だった。
私「。。。エマ、たとえお金持ちになったって、
あんた、
あんな、いい人達に恵まれてるんだもん。。。 」
エマの肩を抱いて、歩いた。
エマ「うっさいわ。。。ハゲのくせに。。。。」
私「ハ、ハゲ関係ないだろ。。。今。。。。」
リシケシの街を、月が優しく照らしていた。
そうしてエマちゃんは
日本に帰って行きました
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